妊娠中の浮腫み(むくみ)の原因と解消法
妊娠中の方で特に妊娠中期以降の方、結婚指輪は簡単にはずれますか?
いつもよりきつかったり、はずすのに一苦労している方は、むくみの症状が出ていますので、産後まで結婚指輪ははずしておきましょう。靴がきつくて脱ぎ履きに苦労する方もいらっしゃることでしょう。
ここでは、妊娠中に起こるむくみについてお話ししたいと思います。
妊娠中の浮腫み(むくみ)の原因
妊娠中に下肢のむくみを訴える人は、健康な妊婦さんでも70~80%の人に見られ、妊娠とむくみの関係は深いと言えます。妊娠中にむくみやすい理由は下記の3つが挙げられます。
1.下大静脈の圧迫
下大静脈は体の中で一番大きな静脈で、下半身の血液を集めて心臓に送る血管です。
妊娠すると子宮の増大に伴って下大静脈は圧迫されるため、足の血液の流れが悪くなり、むくみやすくなります。また、足だけでなく、外陰部の浮腫や痔核としてむくみの症状が表れることがあります。
2.血液中の水分が増えて細胞の間に水が溜まりやすい
妊娠中は体を巡る血液量が妊娠前に比べて最大40~45%増えますが、血液の中にある血球やタンパク質の量は血液量の増え方より少なく、薄まった血液になることが知られています。
体内の水分は濃い方に集まるよう調整されていて、細胞の間にある水分で余分なものは、血管内の水分に引き込まれ、腎臓でろ過されて尿として排出されます。ですが、血液が薄くなると、細胞の間にある水分のほうの濃度が濃くなるため、細胞間内に水分が溜まりやすくなり、むくみやすくなります。
3.エストロゲンの作用
妊娠中はエストロゲンという妊娠ホルモンが多く出ますが、エストロゲンの作用の1つに毛細血管を広げて、細胞間との水分と行き来をしやすくするという効果があります。赤ちゃんとお母さんの間で、栄養や酸素の行き来をしやすくする効果がある一方、むくみやすくなる効果も出てしまいます。
浮腫み(むくみ)の解消法
むくみの解消法として下記の3つが挙げられます。
塩分の摂り過ぎを控える
塩分を摂りすぎると、細胞の間にある水分に含まれる塩分(ナトリウム)濃度があがるため、血管内の水分が細胞間内に移動しやすくなり、むくみやすくなります。塩分はまったく摂らないと身体の恒常性が保てないため、過剰な塩分制限は必要ありませんが、1日当たり10g以下の塩分にとどめることが推奨されています。スナック菓子やインスタント食品には多くの塩分が含まれているため、通常の食事と合わせると10gをオーバーしてしまいます。妊娠中は塩分が多いとされているものは控えたほうが無難です。栄養バランスの整った食事を摂取するように努めましょう。
歩く、下肢を挙げる
重力という圧力がかかることによって、むくみはひどくなります。立ちっぱなしや座りっぱなしなど、重力がかかった状態で同じ姿勢でいると、足のポンプ機能が働かないため、水分は下に溜まったままとなります。足のポンプ機能を動かすためには、歩くことが必要になりますので、同一体位が続く場合には時々休憩を入れて歩くようにしましょう。また、寝る時に足の下にクッションなどを入れて足を挙げて寝る方法も有効です。足を挙げることで血液の流れが足から心臓に向かいやすくなり、寝ている間にむくみが軽減できます。
マッサージ、入浴の時間を設ける
血液の流れを良くすることでむくみは軽減されるため、足首から太ももに向けてマッサージをするようにしましょう。特に入浴中に行うと血行改善に効果的です。最近シャワーばかりで湯船にゆっくり浸かれていない方は、2、3日に1回は湯船に浸かることをおすすめします。入浴は全身の血行改善が図れるだけでなく、気分転換にも効果的です。
怖いむくみ
むくみは妊婦さんに起こりがちですが、中には病気が原因でむくみが起こっている場合があるため注意が必要です。妊娠28週未満で全身にむくみがあるような場合は、腎臓や心臓の病気などが隠れている可能性があるため、かかりつけの産婦人科を受診するようにしましょう。また、手や足のむくみ以外に顔までむくんでしまう場合や、すねを軽く押しただけで跡がついてなかなか消えない場合、指輪がまったく抜けそうにないぐらいむくんだ時にも病院を受診しましょう。むくみの症状と共に高血圧の症状が出ている場合には、妊娠高血圧症候群の可能性が高くなります。むくみ=よくあることと思われるのは非常に危険ですので、日々の変化を見逃さない様にしましょう。
まとめ
妊娠中はむくみやすい状態ですので、指輪は早めにはずしておき、今まで履いていた靴がきつくなった場合は無理せずにサイズを上げるか、ゆったりしたデザインのものに変更するようにしましょう。指輪がはずれなくなってしまい、リングカッターで泣く泣く指輪を切断することになった方もいます。特に帝王切開では、急変時に備えて貴金属ははずさないといけないため、指輪ははずせる間にはすしておきましょう。そして、むくみがひどくなった場合には上記のような病気が隠れていることを忘れず、かかりつけの産婦人科に相談するようにしましょう。